最高裁、利益誘導政治を一蹴 鈴木宗男議員の実刑確定へ
従来の手法に警鐘
「国策捜査だ」として、検察を批判してきた鈴木宗男衆院議員(62)の無罪主張が司法に三たび、退けられた。刑事被告人の立場のまま、国政復帰した後も独特のだみ声で主張する「ムネオ節」で国会内外で存在感を示してきた。逮捕から8年余り。この日の最高裁決定は、地元に利益誘導する「口利き」という従来の政治手法を断罪、改めて警鐘を鳴らしたといえる。
「北海道開発庁長官の本来的な職務として行われる予算の実施計画の公正に対する社会の信頼を損なうもの」。同小法廷は、決定理由でこう述べた。
決定は、4つの罪のうち、北海道開発局発注工事を巡る受託収賄罪のみに言及した。争点となった同罪の成立には、職務権限や請託の立証が不可欠だ。
決定は、開発庁長官の職務権限について「特定業者に便宜を図るよう開発局港湾部長に働き掛けた行為は、職員に対する指導の形を借りて行われ、北海道開発庁長官の職務に密接な関係がある」と判断、同罪が成立するとした一、二審判断を正当とし、有罪へと導いた。これまで「利益誘導は国会議員の役割」としてきた鈴木議員の主張を、最高裁は一蹴(いっしゅう)した形ともいえる。
「政治とカネ」を巡る問題は後を絶たない。KSD事件の村上正邦元労働相、中尾栄一元建設相など最近の汚職事件では実刑判決が相次ぎ、政治家側には厳しい司法判断の流れが定着しつつある。
今回の鈴木議員の事件でも一、二審の実刑判決を維持したことは、「政治とカネ」をめぐり政界全体に、決別を強く迫るメッセージとも読み取れるはずだ。
池上政幸・最高検刑事部長の話
検察の主張を全面的に認めたもので妥当な結論だ。