北朝鮮、ロシア民間軍事会社に武器供与 米が確認
【ワシントン=坂口幸裕】米政府高官は22日、北朝鮮がロシアの民間軍事会社「ワグネル」にミサイルなどの武器を供与したのを確認したと明かした。ワグネルはウクライナに侵攻するロシア軍を支える。米国は同盟国・有志国と連携し、国連安全保障理事会の決議違反で安保理に提起する方針だ。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は22日の記者会見で「北朝鮮がワグネルへの初めての武器輸出を終え、代金を受け取ったのを確かめた。先月にミサイルなどをロシアに運んだ」と語った。戦況を変える装備品ではないとしたうえで「北朝鮮がさらなる軍備輸送を計画しているのを懸念する」と話した。
米政府はワグネルがロシア軍に加わり、ウクライナとの戦闘で影響力を増していると分析する。カービー氏は兵員不足を補うため「ロシアのプーチン大統領が一段とワグネルに軍事支援を求めるようになった」と指摘。ワグネルがロシアの刑務所で雇った囚人を含む5万人ほどをウクライナの戦線に派兵したとの見方を示した。
ロシア軍は激しい戦いが続くウクライナ東部ドンバスでワグネルの支援に依存し、「ロシア軍の高官がワグネルの指揮下にあるケースもある」(カービー氏)とみられる。ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏はウクライナ侵攻で苦戦するロシア軍を公然と批判し、軍事作戦で存在感を高めているもようだ。
プリゴジン氏は外食産業で成功したオリガルヒ(新興財閥)の一人。これまでワグネルとの関係を否定してきたが、今年9月に創設者だと認めた。ワグネルは後ろ盾となっているロシア政府が関係強化を狙うアフリカにも派兵し、強権的な指導者を支える。
米政府はワグネルへの制裁に動く。21日にはロシアの軍事関連企業に指定し、米国の製品・技術を使って軍事転用できないよう輸出規制を強化すると発表した。商務省は声明で「ワグネルは世界で最も悪名高い雇い兵組織のひとつで、ウクライナ全域で残虐行為と人権侵害に積極的にかかわっている」と批判した。
カービー氏は「ワグネルと支援ネットワークに対するさらなる制裁措置を近く発表する」と述べた。
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